空き家・実家を解体して更地する場合、解体工事業者への依頼をする等のポイントをまとめました。
なるべく解体費用を抑えたい方や本当に実家を解体して更地にした方がいいか等も記載してあります。
空き家・実家を解体していいのか・更地にするデメリットを把握
必ずしも解体して更地にすることがいいということはありません。特に税制面で不利になる場合もあります。
まずは対象の物件が空き家のままで保持または売却した方がいいのか、それとも更地にして保持または売却していいのかを検討することが大事です。
空き家を取り壊すと固定資産税が6倍に上がる
解体して更地にした場合、覚えておきたいのは固定資産税が大幅に上がるということです。
実家は資産の扱いになるため固定資産税と都市計画税の対象であり、住宅が建つ土地「住宅用地の特例」によって固定資産税が1/6になる優遇措置があり、この優遇措置が受けられないことで、税金の納税額が一気に跳ね上がります。
解体して建物がなくなると土地への課税が大幅に増額するため、売却できずに更地の状態でしばらく持っていると負担が大きく増すことになります。
ただし現在、放置状態の空き家問題が深刻化しており、今後この固定資産税の優遇措置も変更・撤廃される可能があります。
[参考サイト]固定資産税の住宅用地の特例とはどのようなものですか。(金沢市役所)
再建築不可の土地であるかどうか確認
対象となる土地が再建築不可の土地である場合は注意が必要です。実家を解体し更地になった状態で再度、家を建てようとしても、同じようには再建できない可能性があるため注意が必要です。
これは実家が建てられたタイミングと現行の建築基準法が異なる場合に発生する事例です。当時の法律上は建築可能でも、現行の法律では建築できないことがあります。
実家を更地にした後に新しく家を建てたい場合は必ず現行の建築基準法に当てはめるとどんな家を建てられるのかを確認が必要です。
新しく家を建てる場合だけなく、土地を売却する場合にも注意が必要です。不動産は基本的に再建築不可物件の買取や仲介は嫌がるので、売却価格が大幅に下がるのと、断られる場合もあります。
土地査定価格より解体費用のほうが高い場合・解体費用を捻出できない場合・0円解体
もし空き家・実家の売却をする場合、更地でないと売れないと思っている方はそうではありません。例えば「古家付きの土地」や「物件売却後に解体する」等の方法もあります。
また解体費用を捻出できない場合・解体費用を出したくなくない場合は、試しに一旦「古家付きの土地」や「物件売却後に解体する」として物件を売りに出して見るのも策の一つと思います。
古家付きの土地として販売
古家付きの土地というのは建物が付いている状態で土地として販売することです。
通常の不動産物件と異なるのは、古家付き土地の取引においては、取引するのは土地であって、家屋の価値は評価されません。
一方、土地付き既存住宅の取引においては、家屋も評価され取引の対象となります。
また 古家付きの土地を買った場合には、建っている家屋の撤去等を行なうのは買い主になります。
現実には木造建築物の法定耐用年数を超える築22年以上の木造住宅の建物価値はゼロとみなされ、古家として扱われることが多いようです。
「古家付きの土地」のメリットとしては売主は家を解体して更地にしなくても処分することがでるのと、買い主からしても(建物の状態によりますが)すぐに住めるメリットがあります。
最近では中古戸建てを購入して、リフォームして住むというのが一般的になっているので、そうした買い主からしてみると古家付きの土地は魅力的です。
また「古家付きの土地」売り出すメリットとしては先ほど書いたとおり「固定資産税の住宅用地の軽減措置特例」が適用されるので、更地で売るに比べて固定資産税が安く抑えられるメリットもあり、急いで売る必要ありません。
「古家付きの土地」の場合は契約不適合責任が免除されることが多く、契約に際しては「建物について一切の責任を負わないもの」とする契約不適合責任免責の条文を明記することにより、古家の不具合の不安から解放されます。
ただし古家を解体中に地中内から、以前に建っていた建物の基礎や浄化水槽などが発見されると、撤去費用が発生するリスクがあります。
地中障害物と言われるもので瑕疵にあたり、民法の規定では買主が瑕疵の事実を知ったときから1年以内に通知をし、かつ、買主としての権利行使ができることを認知してから5年、権利を行使可能になってから10年の間は損害賠償請求権があります。
「古家付きの土地」売り出す場合、地中障害物があるかないかを確認した方がいいでしょう。
土地査定価格より解体費用のほうが高い場合は物件売却後に解体
解体費用のほうが高い場合は「物件売却後に解体する」方法をおすすめします。「物件売却後に解体する」場合は、販売中は家をそのまま残し、売買契約後に土地を引き渡すまでに解体する方法です。
売買契約は手付金という形で売買代金の一部が手に入るため、そのお金を使って売却します。メリットとしては解体費用を考慮した値付けにしておけばいいので、損することがありません。
なかなか売れない可能性もありますが、「古家付きの土地」と同様「固定資産税の住宅用地の軽減措置特例」が適用されるので、更地で売るに比べて固定資産税が安く抑えられるメリットもあり、急いで売る必要ありません。
解体業者に依頼をする前に確認しておきたいこと
地方自治体の「空き家解体補助金・助成金」があるかどうか確認
最近では地方自治体が独自に空き家解体補助金・助成金を行っている場合があるので必ず確認した方がいいでしょう。
条件は「周囲に危険を及ぼす恐れのある老朽化した空き家を解体する場合、解体費用の一部を予算の範囲内で助成」や「自主的に解体する場合の解体費用の一部を、予算の範囲内で補助」
等自治体によってさまざまになります。
[参考サイト] 沼田市空き家解体補助金(沼田市)
解体費用の相場・計算式
解体費用は坪数と構造で計算されることが一般的で「構造別の坪単価×延べ床面積」で計算されることが多いです。
それ以外に構造材質「木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造」等により費用が異なります。
一般的に木造より耐震・耐火性に優れた鉄骨・鉄筋コンクリートのほうが、丈夫にできている分だけ解体費用は手間と時間がかかるので高額になります。
丈夫にできているほど解体に手間がかかるのでコストがかかるということを覚えておくといいでしょう。
また2階建て・3階建て・平屋などの建物の階数によって解体費用が異なります。同じ坪数でも平屋よりも2階建てのほうが解体費用が安い傾向があります。
その理由としては屋根や基礎の解体に費用がかかるためです。
いずれにしても対象物件の材質構造を把握しておくことが大事です。「建物登記簿謄本」「宅地建物取引業法に基づく重要事項説明書」「不動産取引の書類」などから建物の種類を確認することができます。
■株式会社クラッソーネの「解体費用シミュレーター」では「空き家の解体費用」をAIで査定が可能です。
解体費用の付随費用に注意
実際には家屋だけなく、ブロック塀や色々なものを解体撤去する必要があり、それを付随費用といいます。
主な例として「カーポート」「ブロック塀」「植物」「門扉」「倉庫・物置」「浄化槽」「井戸の埋め戻し」「アスベスト」「地中埋設物」「廃材搬出」があります。
この付随品が多ければ多いほど、費用が嵩むので注意が必要です。
ちなみに家を解体で出た廃材の搬出にも費用がかかります。廃材は品目によって料金が異なります。中にはリサイクル可能な廃材もあるので、その場合はディスカウントしてくれる場合もあります。
解体費用は立地も影響
解体費用は立地も影響してきます。道路幅の問題等で例えば重機が搬入できない場合、手作業での解体作業になったり、ダンプ等が横付けできない場合等、搬出作業の工数がかかってしまう等、コストが跳ね上がります。
「前面道路の幅が狭い(4m未満) 」「 隣接地との距離が近い(1m未満)」「重機・ダンプを駐車するスペースがない」等の場合は注意が必要です。また交通量の多い場所での解体作業は交通整理の人員が必要になって人件費が加算されます。
解体費用の相場
実家が木造であれば3万円~4万円/坪、鉄骨造なら5~7万円/坪、鉄筋コンクリート造なら6~8万円/坪といわれています。
30坪の場合、約90~150万円・50坪の場合、約150~250万円と念頭に入れておくといいかもしれません。
ただし最近では解体業者の求人難や人件費高騰により、解体費用も値上がりの傾向があります。これから値下がる可能性は少ないので、もし空き家・実家の処分で解体を希望する場合は
なるべく早く依頼をした方がいいでしょう。
解体費用の対象地域に相場が異なるので注意
解体する地域によって、解体費用は異なります。
東京・神奈川・大阪・名古屋など首都圏地域は相場が高い一方、地方にいくほど相場が安い傾向にあるのが一般的です。
また地方だと解体業者の数も少ないので依頼する場合でも業者が限られてしまいます。
失敗しない解体工事業者の選び方
複数社の見積を比較して業者を決める
どのサービスでも基本ですが、複数の解体業者に見積もりを依頼をして、相場を把握することが大事です。
親切な解体業者は相見積もりになると値下げしてくれる会社もあります。
費用の内訳の詳細を記載した見積書を提示する解体工事業者を選ぶ
費用の内訳の詳細を記載した見積書を提示する解体工事業者を選ぶことが大事です。「解体工事一式」としか書いていない見積もり提示してくる解体工事業者は辞めておいた方がいいでしょう。
その理由としては解体には付随業務が必ずついてくるからです。
見積もりの注意点としてはさきほどの付随費用も含まれているかということ(総額でいくらか)のチェックが必要です。不明な項目やあいまいな項目がある場合には必ず確認した方がいいでしょう。
金額が安いだけ選んでしまうと、あとから付随費用を請求される場合があるからです。
現地見積をする解体工事業者を選ぶ
一般的に解体業者の見積もりは「施主からの情報だけを頼りに口頭で見積もりを出す方法」と「担当者が実際に現場に訪問して建物の状態を見てから計算する方法」に大きく分けられます。
当然ながら後者のほうが見積もり精度が高いので、あとで必要な工事が発生して追加料金を請求されるということはありません。必ず現地見積もりしてくる解体工事業者を選びましょう。
保険に加入している解体工事業者を選ぶ
解体工事をする場合に万が一事故やトラブルが起きる可能性があります。その場合に保険に加入している解体工事業者を選んでおくと安心です。
解体工事業者一括見積もりサイトや「解体業者」で検索上位に来る業者は辞めた方がいい
最近では解体工事業者一括見積もりサイト等があり、一件便利そうに見えますが、サイト仲介手数料を支払っているので、その分解体費用に反映されている場合があるので注意が必要です。
ポータルサイトの運営は、解体業者からいただく「紹介料」で成り立っているからです。
また「解体業者」で検索上位に来る解体工事業者もSEO業者に依頼をしてSEO対策を行っている場合もあり、一括見積もりサイト同様、解体費用に反映されている場合があるので注意が必要です。
実家・空き家の解体費用を安くする方法
自分で解体工事業者に依頼をする
解体工事業者に依頼をするときは個人で依頼するより、多くの場合は不動産屋さん経由が多いでしょう。実際、解体工事業者の場合、家屋の解体の場合は不動産会社からの紹介が多いです。
その場合、解体工事業者が不動産屋さんに仲介手数料や紹介料を支払う場合が多く、その分解体工事費用に反映されることになり、当然高くなってしまいます。直接、解体工事業者に依頼をすることにより
中間マージンを取られなくなるので、その分リーズナブルになることがあります。
自社で機材を所有している解体工事業者に依頼
解体工事業者なのに自社で機材を所有していないの?と疑問に持つ人が多いでしょう。解体日数が長くない場合、レンタル会社から機材を借りて解体作業を行う業者も少なくありません。
また解体内容によって機材が異なる場合があるのですべての機材を所有しているとも限らないです。当然重機を所有していない場合、その分レンタル料・リース料・外注費が発生するのでその分、解体費用に反映される可能性が高いです。
自社で機材を所有している解体工事業者に依頼する方がリーズナブルで済む場合が多いです。
解体工事業者の繁忙期を避けて依頼
解体工事業者の繁忙期を避けて依頼することも大事です。一般的に「12〜3月末」までは解体工事業者の繁忙期になります。それ以外の時期に依頼をした方がいいでしょう。
植木等はあらかじめ処分
植木等(抜根・伐採等)はあらかじめ処分しておくとその分付随費用がかからないです。
価値のある植木等は、植木買取り業者に依頼をすると値段が付く場合があります。
家財道具や家電は無料回収業者・リサイクル業者に引き取り・買取り依頼または粗大ごみとして処分
家財道具や家電は無料回収業者やリサイクル業者に引き取り・買取り依頼をお願いした方がいいでしょう。
家屋の解体によって出た廃材の処分は「産業廃棄物」に、家財道具の処分は「一般廃棄物」異なるためです。
家財道具の処分を解体業者に依頼しないで、解体工事前に自分で処分する方が解体費用を安く抑えられます。
自治体にもよりますが、粗大ごみとして処分したほうが安い場合が多いです。
地方自治体の補助金・助成金を活用
先ほど書いたとおり、最近では地方自治体が独自に解体費用を一部負担してくれる場合があるので依頼する前に必ず確認をした方がいいでしょう。
地元の解体工事業者を選ぶ
解体工事業者の場合、解体作業時、産業廃棄物の処理施設に何度か往復する必要があります。
産業廃棄物の処理施設と解体現場が近いとそれだけ作業効率が高くなる=工数が低くなる=費用が安くなるので、なるべく地元の解体工事業者を選ぶことをおすすめします。
近隣住民へ工事前に挨拶をしておく
解体工事時は騒音・振動・粉塵・工事車両の駐車等、近隣の方に迷惑をかける場合があります。
近隣住民とのトラブルが発生すると、工期遅れが発生する分、追加費用がかかることや、トラブル対応に費用がかかる場合があります。
中には作業中止という場合もあります。近所トラブルによる費用負担を避けるためには「近隣住民へ解体工事前に挨拶をしておく」ことがとても大事です。
解体工事業者が行う場合もありますが、事前に挨拶をしておくをことにより、その分、費用が安くなる場合があるので見積もり時に確認しておくといいでしょう。
費用が安くなるならない以前に不要なトラブルを避けるためにもマナーとして一言挨拶しておくことが大事です。
建物滅失登記は忘れずに行う
実家の解体が完了したら、大切なのは必ず1か月以内に「建物滅失登記」を行いましょう。
建物滅失登記は義務ですので、1か月以内に申請しないと10万円以下の過料が請求されるケースがあるので注意が必要です。
実家は建築されたタイミングで登記されていますので、解体後に滅失登記を行わなければ、建物がなくとも固定資産税が発生し続けたり、土地の売却、再建築ができないという問題が生じます。
一般的に建物滅失登記は、土地家屋調査士や解体工事業者が代行することが多いものの、所有者または所有権の登記名義人が行うことも可能です。
自分で登記を行うと、土地家屋調査士に支払う登記の代行費用(5万円程度)を支払わずに済むため、その分を節約できます。