ビルメンテナンス業界のIT化は大きな企業であれば手掛けてみえるところも多いですが、中小規模のビルメン企業においては???、というところが大多数ではないでしょうか。まして、テレワーク・リモートワークとなると導入率は極めて低いでしょう。
ビルメンテナンスのIT化と言うと、どうしても人材不足ための現場作業のロボットの導入にフォーカスされがちですが、バックオフィスのIT化・労働生産性の向上のほうがイニシャルコストもかからず成果が出やすいと考えます。
ビルメン業界においても、バックオフィスは、フロントに対して間接コストという認識がやはり一般的です(曖昧にせずに書きます)。
間接コストにさせないバックオフィスというやり方も当然にありますが、話の主題から離れてくるので、ここではお客様の意向や現場作業者とのバランスとかの細かいやりとりが発生してくるフロントより、バックオフィスのコスト削減の方が効率がいいということで進めていきます。
今回は、ビルメン企業のテレワーク・リモートワークの導入について書いてみました。
災害等リスクヘッジのためのテレワーク・リモートワーク
今後は災害リスクが増えるのでBCPは必須
現在コロナ禍でリモートワーク・テレワークが注目されていますが、それ以外にも猛暑や台風・地震等以前に比べて大規模災害のリスクが高くなっています。
そうした場合の企業存続のためのリスクヘッジとしてのテレワーク・リモートワークは必須条件だと考えます。
仮にコロナウイルスで、社内においてクラスターが発生した場合、数週間の業務停止の可能性があり、取引先との信用問題にも発展しかねません。
最近はBCP(Business Continuity Plan)という、災害・不祥事など緊急事態が発生したときに、企業として損害を最小限に抑え、事業の継続や復旧を図るためのプランを事前に準備しておくという考え方も出てきています。
[参考サイト] 「BCPとは事業継続計画(Business Continuity Plan)」 野村総合研究所(NRI) 用語解説>>
[参考サイト] 「クライシスマネージメント・BCP(事業継続計画)の重要性」e-website.org >>
コロナより怖いのがIT格差による企業間格差
「しばらくするとコロナ禍も落ち着くだろうから、それまでは我慢」という話もよく聞きます。
実はコロナ禍はきっかけに過ぎず、一番怖いのはIT化(テレワーク・リモートワーク)の企業間格差です。
例えば、ライバルが皆メールで一斉送信できるのに1件だけFAX送信しか対応していない会社があった場合、その企業はよほどの優位性が事業にない限り、取り残されていくのではいでしょうか。
またオンラインミーティングが主流になった場合、今まで通りの客先へ足を運ぶ訪問周りしかしていない企業は、淘汰されていく可能性があります。
ビルメン企業でテレワーク・リモートワークの恩恵を最も受けるのは営業担当
ビルメン企業でテレワーク・リモートワークの恩恵を最も受けるのは外周り中心の営業担当部署です。直行直帰が可能ですし、クライアント先もリモート会議が対応可能であれば、1日辺りのお客様との接触回数も増えます。
バックオフィスの場合には、効率の良いシステムを導入する、つまり俗に言うIT化が生産効率(労働生産性)を上げます。(これにはコツがあるので後述します。)
ビルメン企業のIT化・テレワーク・リモートワークで失敗するパターン
過去いくつかのビルメン企業のIT化、またはIT企業のオフィスを見てきた中でIT化に失敗する可能性の高い傾向があったので参考までに紹介します。
テレワーク・リモートワークの成功の可否はマネジメント力
IT化に取り組むビルメン企業を見てきた中で、テレワーク・リモートワークの成功の可否は、職場のマネジメント力がポイントだと感じます。
日頃から組織の統率が取れている職場というのは、自己管理できる社員が多く、個人裁量の比率が高く、リモートワークにもスムーズに移行していますが、逆にそうでない職場(ガイドラインルールがない・オフィスでしかできない決め事が多い・定例会議が多い・何でもとりあえずペーパーに残したがる等)は、スムーズにリモートワークに移行できない場合が多いです。
テレワーク以前に組織改革、アフターコロナ以降にも対応する組織改革が必要です。昨今、「テレワークに移行してみたが、逆に生産性が落ちた。」系の統計や事例で挙げられている企業はまずこのパターンの幾つかが入っているはずです。
情報共有の方法が間違っている(暗黙のルールで運営している会社は要注意)
本来見る必要のある人がフォルダアクセスできなかったり、情報共有の必要のないファイルが共有されていたり、フォルダ構造や権限設定がめちゃくちゃで使いづらい。
これはテレワークに移行して、初めて体感するという場合が多いです。
なぜなら職場では気軽に、「あのファイルどこにある?」と声を出せば、誰かが「◯◯フォルダにあります。」と答えてくれるからです。小さなことですが、サーバー上のファイルやフォルダは、誰が見てもアクセスしやすいように明確にしておくことが大事です。
また中小規模(50人以下)ビルメン企業において、専任のシステム担当がいない場合は、個別にフォルダやファイルのアクセス権限を付ける必要はないと考えます。社員の離職や部署異動によるアクセス権限の削除変更が都度必要であり、それを忘れていて放置しておくとセキュリティ上危険だからです。
実際に、退社後ライバル企業に転職しても、以前の会社のファイルにアクセス出来てしまったという話を聞いたことがあります。特に専任のシステム管理者がいない企業は注意が必要です。
導入したシステム・ツールが使いづらい
導入したシステム・ツールが使いづらいという場合も多いです。よくあるのはシステム担当が現場の業務をしっかり把握していない状態で、システム会社やサービスを決定してしまう場合で、これも業界での評判やトレンドや噂に流されやすいリーダーのいる企業によく見られる傾向です。同業他社で抜群に良くても、そのまま自社にも当てはまるシステムというのはまずありません。
まずは一般的なクラウドプラットフォームを利用して、その上で足りない部分はフルスクラッチで開発する等の段階を踏むことのほうがリスクが少ないと思います。
従来の組織構造をそのままテレワーク化している
ビルメンのIT化・テレワークの失敗パターンとして多いのは従来の組織構造や職場の慣習をそのままIT化・テレワーク化してしまっているパターンです。
例えば在宅時の勤怠管理や世間でも有名な判子押すためだけの出社、全体朝礼等、数多くあります。ITを自社にをうまく機能させるポイントは、導入したシステムやツールの方にある程度業務フローを合わすことです。
逆に今までの業務にシステムやツールを合わせようとすると、フルスクラッチ開発になるために高コストになりがちです。
■ビデオ会議あるある!謎のビジネスマナー?!テレワークで見える企業の形>>
最後まで失敗しないビルメン企業のIT化・リモートワーク/テレワーク導入のコツ
まずは一度、トライアルでテレワークを行う
テレワーク・リモートワークを企業として導入するにあたって、まずは一度部署ごとや、1週間でもいいので期間を区切ってトライアルを行うことをおすすめします。
そしてトライアルの前に、必ず従業員の自宅でのネット環境・PC環境(ウェブカメラ等があるか)・利用しているアプリ等を確認したほうがいいでしょう。
特にビルメンテナンス業界は、バックオフィス、フロント共にテレワーク・リモートワークと親和性の高い業界と言えます。まずは期間を決めてトライアルすることにより、いざ本当にテレワークに移行するときに何が足りなくて、何が必要なのか、または必要のない作業が何だったのか、の洗い出しができます。
例えば月次・週次レポートがいらなくても業務に支障がなかったり、定例ミーティングをしなくても情報共有に支障がなかったり等は多々あります。
逆に必要なファイルがデジタル化されていないので困った等もあったりします。ビルメン業者のテレワーク・リモートワーク時はこうした業務運営のバグ出し、業務の断捨離をすることで、より円滑に導入することが可能です。
IT化・DX化するまえに業務の断捨離を行う
IT導入・DX化する前にまずは業務の見直し・断捨離を行うことをおすすめします。ほんとに必要な業務なのか、電子印鑑導入前に、そもそも印鑑が必要なのかというところをきちんと断捨離することがIT化移行をスムーズにするだけなく、無駄なコストを省けて、労働生産性を向上することができるからです。
クラウドプラットフォームを活用
経理システムやビルメン管理基幹システム以外の社内の情報共有コミュニケーションツールとして、最近ではGoogle WorkspaceやMicrosoft 365やZoom・Chatwork等、低価格で利用できるクラウドプラットフォームサービスが多数あります。
以前のように初期費用が高額になることもありません。
サブスクリプション制なのでいつでもやめることが可能ですし、まずはトライアルとして無料で導入することも可能です。
下手なビルメン企業専門を謳うマイナーなシステムを導入するとガラパゴス化する可能性が極めて高くなるので注意が必要です。
よほどシステム管理を自社体制でしっかり構築・継続していく自信がなければ、Google WorkspaceやMicrosoft 365等メジャーなサービスを導入することをおすすめします。
サービスのアップデートが頻繁に行われるのと、操作方法や不具合情報もネットに多数あるので万が一のトラブル時にも自己解決しやすい、またトラブル対応しやすいからです。
どうしても社内でしかアクセス出来ないファイルやビルメン管理基幹システム等の場合はNAS・VPNまたはリモートアクセスによりパソコンを操作をすることで対応できます。
スマホアプリ対応のツールを導入
テレワーク・リモートワークでの情報共有ツールやオンラインミーティング用のツールを導入する際には、スマホアプリ対応のツールを導入することをおすすめします。
特にビルメン業界は現場作業が多いので、スマホで情報共有できると格段に生産性が上がります。また自宅等にパソコンがない・固定回線(光回線)がない場合でも、スマホでミーティング参加が可能になります。
自宅にパソコンがないためにミーティングに参加できない、ファイルが参照できずに困っている、などの社員が職場に数名いるというケースが実際に少なからずあります。
また各従業員間の情報リテラシー(格差)も重要です。特にビルメン業界の場合、現場作業員とバックオフィス等のITスキルの差が大きい場合もあります。例えば現場でのLINEの使用率が高いのなら、LINEWORKSのツールを導入したほうが、移行がスムーズですし、普段使い慣れているので利用率も上がるでしょう。
※LINEWORKSは通常のLINEとは異なりビジネス向けのLINEになり、アクセン権限設定等セキュリティ面・サポート面も強化されています。
ビルメン経営で重要なのは、アナログ作業を駆逐し、いかにデジタルに移行するか
当たり前なんですがテレワーク・リモートワーク等IT化は、とにかくアナログ作業を駆逐することがポイントです。
例えば業務をデジタル化しても、一部アナログ作業が残っているとその部分がボトルネックになってしまい返ってパフォーマンスが落ちてしまう、ということが多々おこります。道路に例えるなら、4車線道路がいきなり1車線になってしまい渋滞発生という感じでしょうか。
ビルメンのオフィスを訪問して、IT化されている職場と、そうでない職場をビジュアル的にもはっきり認識できるのは、「紙の多さ」と「掲示板」です。IT化されてない職場はやたらと紙の量が多くて、目に付きます。
机の上だけなく・コピー機周り・キャビネットのファイル等、オフィスのあちらこちらに紙が目立ちます。逆にIT企業の場合は、極端に紙が少ないのです。以前伺ったGoogleのオフィスも紙がほとんどありませんでした。
もう一つは、壁に設置されている掲示板です。もし社員の割合に比べて、紙や掲示板の専有面積が多い職場は、まずデジタル化されていない職場と言ってよいでしょう。
もちろん紙を全部デジタル化しなければいけないというわけでもありませんが、必要性の低いものは積極的に処分・断捨離することをおすすめします。
デジタル化=情報流出のリスクもあるからです。ビルメンIT化のセキュリティ面を考える上で一番の対策しては、必要以上の情報を残さないというのもあります。
とかくなんでも記録として残しておきたくなりますが、残しておきたいのは優秀な社員の方です(これを徹底実践しているビルメンリーダーはとても少ないと感じるのが実際ですが)。
ハードウエア機器導入時は助成金の有効活用を
今、テレワーク・リモートワークを導入する企業は、国や地方自治体から助成金が支給される場合が多いので、導入時はチェックしたほうがいいでしょう。NAS・パソコン・UPS等ハードウエア機器だけなく、クラウドサービスやソフトウエアも助成金対応の場合が多いです
※注意すべきなのは、助成金申請をサポートするSIベンダーの中には、自社のサービスを導入させたいがために助成金を活用しませんか?というセールストークをする企業が少なからずいることです。
助成金とはいえ、まったく必要のない高額なツールを導入させられたあげく、使い勝手もいまいち、むしろ生産性も落ちて、さらに保守管理費用も高いという、いったい何十苦なんだ?の事例もありましたので注意が必要です。
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クライアント・取引先の協力も必要
ビルメン企業のテレワークには、どうしてもクライアント・取引先の協力も必要で大切になってきます。不幸中の幸いですがコロナ禍ということで、オンライン会議や情報共有に、取引先・クライアントも進んで協力してくれる場合が多いでしょう。
例えばトラブル発生時、まずは現場に直行して情報確認するのではなく、取引先の担当からトラブル箇所の写真を送って頂いて、オンラインで状況を先に確認するだけでも、現場への訪問回数を減らせながら次への対処も早く取りやすくなるので、互いのメリットになるのではないでしょうか。
■ビルメン企業のテレワーク・リモートワーク導入に関してのご相談はこちらで受け付けていますのでお困りの方はぜひ一度ご相談ください>>